かつてトラックドライバーといえば、仕事はあくまでも「荷物を運ぶ」ことでした。
搬送先ではトラックの荷下ろしを手伝うこともなく、その間は待っていることが当たり前でした。(取引先との力関係によります)
しかし時代の流れと共に、トラックドライバーの仕事内容も徐々に変化しました。
今では積荷、荷卸は当たり前のようにドライバーの仕事になっています。
ヤマト運輸や佐川急便のような宅配便のドライバーの場合は、さながら接客業かと見間違えるほど、お客様相手に愛想も求められる時代になりました。
ぶっきらぼう、不愛想なドライバーで荷物さえ届けてくれれば良いと考える人もいます。
その一方で、態度が悪い、というよりも、 「いまいち愛想が悪い」というだけでドライバーにクレームが入ることがあります。
ヤマト運輸でクレームをもらったドライバーは、確かに愛想が良いタイプではありませんでした。
体格もそれなりに良いので黙々と仕事をしている姿は威圧感があるほどでした。
しかし、決しておかしな言動をする訳ではなく、淡々と仕事をこなすタイプのドライバーでした。
そんな彼に対してクレームが寄せられたのです。
スマートフォンの普及で簡単にクレーマーになれる
クレームの内容は、要約すると「不愛想すぎて怖い。何かされるかと思った」というものでした。
クレーム発信者が女性であることを考えると致し方ない部分もありますが、それでもさすがに「ドライバーにそこまで求めるのか?」と感じさせたクレームでした。
確かに愛嬌のあるドライバーの方がお客様としても安心感があるかもしれませんが、いかなる表情であれ荷物を届けることが仕事です。
しかし、こういうクレームは全国のヤマト運輸では決して珍しくはありません。
宅配便のドライバーがお客様と接する時間はほんの数十秒程度です。
しかし、その数十秒でさえ我慢できなかったのでしょうか?こういうクレームにはスマートフォン、携帯電話の普及が一因なのではないかと考えられます。
荷物を届けに来たドライバーが気に食わなければ、すぐにヤマト運輸、佐川急便の本社やお客様相談室の電話番号を調べ、電話することが出来ます。「今日、配達しに来たドライバーの態度はおかしい!」とでも主張されれば、会社としては電話越しで謝るしかありません。
こういうクレームの場合、お客様の主観によるものなので証明のしようがありません。
荷物が破損していていたり、日付指定、時間指定の荷物が時間通りに届けられなかったというクレームであれば「証拠」もあるので宅配業者側の責任です。
荷物の破損や日付指定不履行、時間指定の不履行は配達ドライバーの責任だけではなく、依頼者から受け取るお客様までの「荷物のバトンリレー」に携わる営業所、センター、ベースに従事するすべての従業員に可能性があります。
しかし、ドライバーの愛想が悪いと言われても、もしかしたらそのドライバーは最大限の愛嬌を振舞ってお客様に接していたかもしれません。
逆にヘラヘラしていたらそれはそれで「バカにしているのか?」という別のクレームになっていたかもしれません。
結局、この種のクレームは宅配便のドライバーが悪いというよりも、虫の居所が悪かったお客様が絶好のターゲットを見つけただけに過ぎないのではないでしょうか?
ドライバーに過度なサービスを要求するのはナンセンスだと思います。
宅配便のドライバーは時間に追われ、仕事中は笑顔さえ忘れてしまうほど余裕がないこともあります。
もちろんお客様相手には愛想が良いに越したことはありませんが、「ドライバーにそこまで求めるの?」というのが本音です。
荷物を運んでくれる。それだけでも十分ですが、この手のクレーマーは「お金を払っているんだからサービス業のあなたは愛想良く仕事をして当たり前でしょ!」という意識があるのでしょう
佐川急便、ヤマト運輸のドライバー研修も時代とともに変化している
過度なサービスが求められるようになった時代のクレームは、ボディブローのようにヤマト運輸や佐川急便にダメージを与え新人教育にも影響を与えています。
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ドライバーの新人研修では「なるべく愛想よく」とか「ハキハキと受け答えをするように」といったことを新人のドライバーに教育せざるを得ません。
ドライバー個人の印象であったにしても、「ヤマト運輸のドライバーは愛想が悪い」、「佐川急便のドライバーは最悪だった」などと批判されれば、会社そのもののイメージを悪くすることになり兼ねないからです。
ヤマト運輸や佐川急便などの宅急便、宅配便を扱う運送会社は、お客様第一主義、クレームに対しては事なかれ主義です。
お客様からクレームがあったら自社の社員の心情よりもお客様の言い分を尊重してクレームには「とりあえず謝れ」という暗黙の教育を受けます。
そして新たなケースのクレームがあると社内では暗黙のマニュアルが出来上がりドライバーの「やらなければならないこと」が増えます。
お客様が商品を購入して出荷人様から配送料を戴いている以上、ドライバーが荷物を届けるのは「お客様」ではありますが、ドライバーにまでまるで一流ホテルのような接客を求めるのはいかがなものでしょうか?
近年、配送料が値上がりしている背景があるので、お客様の要求レベルが高くなっているのかもしれません。「配送料値上がりしてんだからサービスも良くなって当たり前よね!」という井戸端会議の戯言が聞こえてきそうです。
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