少々前の話になりますが、ヤマト運輸でクレーム対応をしていた頃、お客様からのクレームで社内でマニュアル化されたことがあります。
ヤマト運輸に限らず宅配をするドライバーにとって、今でこそ当たり前の事かと思いますが、その当時はまだまだルールとして整備されてなかったことです。
そのクレームがあった時、担当のドライバーは「え?何で?」と返答がありました。
この問題をデリケートと取るか、あるいは「そりゃそうだ」と取るかは人それぞれかと思います。
そのクレームとはドライバーが毎日、何十回、何百回と繰り返している「ドライバーが乗り降りする際のドアの開閉です」。
ドアの開閉、そしてトラックからの乗降。
ドライバーにとっては「一日に何度も行うこと」ではないでしょうか?
ドライバーが乗り降りする際のドアの開閉のクレームとは、「車が接近しているのにドアを開けるな」というものです。
ドアの開閉事故は重大事故になる要素がある
交通量が多い割に道幅が広くはない道路の場合、ヤマト運輸のトラックが路上駐車をするとそれだけでも一般ドライバーにとっては少々邪魔なものになってしまうのも分からない話ではありません。
(ヤマト運輸は運転席から助手席に歩いて移動できるトラックを導入しています。最新のウォークスルートラックの記事を見つけました。参考までに➔ 「グリーン物流」の実現に向けてEVウォークスルートラックを導入check
管理人の一言
トラックを駐車して、エンジンを切って、シートベルトを外して、配達先の伝票を確認して、運転席側のミラーを見て(後方が見ずらい時は運転席側の窓ガラスを開けて直接目視をする)ドアを開ける、これが駐車してから降車するまでの一連の作業です。
これを一日に何百回とします。何千回、何万回のうち「運転席側のミラーを見て」が見たつもりが見ていなかった、ということが起きてしまいます。
ドアの開閉事故を抑止する方法は、ドアを開ける時は「少し開けるまでは早く、そして少し開けた後は降車できるまでドアをゆっくり開けるクセをつける これが極めて重要です。
(「運転席側のミラーを見て」が見たつもりが見ていなかった➔ これを改善しようとして「俺は完璧にミラーを見てやる」、と思って実践しても宅配をしているドライバーの事故リスクは変わりません)
ドアの開閉に限らず運送業を毎日従事しているドライバーは、自分なりに事故を起こさない方法を体得していると思います。「体得」の引き出しが多ければ多いほど長く運送業に従事することが出来るでしょう。
今でこそ「配達に行く際ドアを開閉する時は後ろを見ろ」という過去の事故事例に基づくマニュアルがあると思います。
まだまだ社内のマニュアルが明文化されていない頃で、先輩の事故事例から現場で実習では教えるものの独り立ちしても理解していないドライバーもいました。
(教える先輩によって個人差があるため社内規定がないと独り立ちしたドライバーで教わったドライバーと教わっていないドライバーがいた)
結果、後方の車や自転車が近付いているにも関わらずドアを開けて運転席から降りたため事故やクレームになってしまったことがありました。
ドアの開閉はデリケートな問題ではあるものの、近年はどのドライバーもしっかりと意識しているのではないでしょうか?
社内規定でマニュアル化されてからはドアの開閉で事故やクレームになることは少なくなりました。
ヤマト運輸では今回のクレームには大きな意義があったと考えられています。
まず、クレームを受けたことで社内規定で「ドアを開ける際の注意事項」が明文化されて新人研修をする時に同乗指導で全ての新人ドライバーが教わるようになりました。
これまでは新人研修の時に軽く注意するレベルでした。
悪い言い方をすれば「新人研修の時だけ気を付けていればよかったこと」だったのです。
しかし、今回のクレームでマニュアル化されたことで全ての新人ドライバーに正しく教育がなされ新人研修の時だけでなく、どのような時にも常に心掛けなければならないことになりました。
また、どのような指導も仕事に慣れると日常の運転が惰性なってしまいがちですが改めて注意喚起ができた点も大きかったように思えます。
ドライバーだけではなく全ての仕事に於いて慣れてくると次第に、「自分のやりやすいやり方」が見えてきます。
そして、マニュアルを無視・・・は言い過ぎですが、自分流になってしまいがちです。
もちろん自分自身のやりやすい方法を模索するのは悪くはありませんが、ドアの開閉に関してはやり方云々ではなく確認するだけです。
実際、ドアを開ければ、後続車に迷惑をかけるのは事実です。
早く荷物を運びたいドライバー心理もよく分かりますが一方で安全を怠ってはいけません。
今回のクレームで改めて「何が大切なのか」をドライバーに考えてもらうきっかけになりました。
ドライバーの阻喪が動画で拡散される時代
今回のクレームは、スマートフォンが普及していない頃のクレームでした。
その点も幸いしました。
もしもですが、今このような問題が起きてしまったとすれば、電話で終わる話ではなかったかもしれません。
後続ドライバーがスマートフォンで撮影したり、あるいはドライブレコーダー等に記録されたものがyoutube等の動画共有サイト、twitterやInstagramといったSNSで拡散され、「以後気を付けます」では済まされなかったことでしょう。
大問題にまで発展してヤマト運輸の本社として何かしらの声明を発表しなければならない事態にまで発展していた可能性もあります。
その点ではクレームを受けたのが「良い時代だった」と言えます。
ドライバーの仕事に限った話ではありませんが、どのような仕事も、いつどこで誰に見られているか分かりません。
見られているだけではなく記録される可能性があります。
人に見られている意識がなくマニュアルやルールを無視するとドライバーの阻喪が動画で拡散され炎上してから騒動になり既に取り返しがつかなくなってから事態が発覚する・・・という恐ろしい時代です。
管理人の一言
この動画は炎上してから佐川急便の本社が認識して取り返しのつかない大騒動になりました。➔ 「イライラして」佐川配達員が荷物放り投げcheck
特にドライバーは(制服を着ているドライバーは特に)多くの人の目に触れる仕事だけに、自分自身が無意識で行っていることがクレーム、強いては炎上騒動に発展しかねないという点を強く認識しなければなりません。(2020年4月28日改訂)
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