ヤマト運輸にクレームが寄せられることはいわば日常茶飯事である。
本社に寄せられるものもあれば、主管支店や営業所など、とにかく様々な場所に直接電話をしてくるクレームがある。
そのためか、社内にはクレームに対するある種の「マヒ」があるのも事実だ。
本来はクレームに大きいも小さいもないはずなのだが、すぐに何とかできるようなクレームであれば、上層部はそこまで怒ることはない。
しかし、場合によっては本社が激怒することがある。
本社にクレームが入り、そのことに激怒したケースは何度かある。「そこまで怒ることではないだろう」と思われる、ある種のギャップを感じたクレームをご紹介しよう。
本社の上層部が激怒したクレームとは「ヤマト運輸の制服を着た人間がたむろしている」というものだ。
おそらく、ヤマト運輸関係者以外なのでは?、と思うだろう。
深夜のコンビニ、あるいは深夜営業のスーパーにヤマト運輸の制服を着た人間が来るというものであった。
これは複数から寄せられたクレームだが、ヤマト運輸の社内の人間であれば「あ~」ということになる。
ヤマト運輸本社の上層部は何故?激怒するのか?
佐川急便も同様だが、ヤマト運輸も勤務中は当然制服着用が義務付けられている。
テレビのコマーシャルでTOKIOが着ていた制服、と言えばピンとくる人も多いだろう。
グレーっぽい色に、上はホワイトのライン、下はサイドに緑のラインが入っているものだ。
あの制服は、ヤマト運輸の社員に貸与される。
ドライバーだけではなく、主管支店、営業所では事務職のスタッフもあの制服で仕事をしている。ベースの仕分け作業のパート契約社員も同様だ。
クレームで指摘された「ヤマト運輸の社員」はドライバー以外のスタッフであろう。
着替えるのが面倒だからそのままの格好で帰宅する途中、スーパーやコンビニなどに立ち寄ったものと思われる。これに対して「勤務中に何をしているんだ?」というクレームが寄せられたということだ。
破損や誤仕分け、集配や時間指定ミスのようにお客様に直接的な迷惑をかけたことで激怒するのであれば理解できる。
今回の件は複数からクレームが寄せられたとはいえ、誰かに迷惑をかけたわけではない。
ましてや時間はいずれも夜の22時以降。それでも激怒するに至った理由は、ある意味ではヤマト運輸という会社を象徴しているともいえる。
ヤマト運輸は会社のイメージが悪くなることにうるさい会社
はっきり言ってしまえば「イメージが悪い」からだ。
そして、ヤマト運輸では基本的に制服姿での出退勤を禁止している。
私服で出勤し、職場で制服に着替えて仕事をし、仕事を終えたら着替えて帰宅する。これは社内規定で定められている。つまり、制服姿で帰宅することそのものが社内規定違反だ。
そのような規定があること自体が驚きだが、これはいわば「制服姿だとヤマト運輸の社員だと分かってしまう」という理屈だ。
「帰宅途中に何かあればヤマト運輸の看板に泥を塗ることになるから、着替えてから帰れ」ということだ。
こういうことまで規定していることが驚きかもしれないが、ヤマト運輸は組織が大きい。
ドライバーのようにしっかりと研修を受けている入社している人もいれば、ベースでは大学生やフリーター、高校生でさえも制服を貸与される。
社会人ではない高校生に「出退勤時に制服を私服に着替えて通勤してください!」と言っても果たしてどのくらいの人が私服に着替えて通勤しているだろうか?
制服を着ていることで「周囲からヤマト運輸の社員として見られる」など考えず、それこそ「バイトが終わって着替えるのが面倒だからチャリで帰る」くらいの感覚だろう。
高校生ともなればコンビニなどの前でたむろして仲間たちと騒ぐこともあるだろう。
実情はどうであれ、知らない人が見たら「ヤマト運輸の若い社員がコンビニの前でたむろして騒いでいる」という光景である。
大手運送会社はブランドイメージを大切にする
ヤマト運輸が大事にしているのは会社のイメージだ。これは間違いない。
サービスをお客様に提供する企業は会社のイメージが悪くなることを恐れている。イメージが悪くなると経営に悪影響が出ることもあるからだ。
誤仕分けや破損、配送ミスに対して「どうでも良い」と思っている訳ではないが、それらはいわば運送会社としては「よくあるミス」であるのも事実。
そのため、これらに関してはさほどあれこれ言わない。
しかし、ヤマト運輸という会社のイメージが悪くなることに関してはナーバスになる。
今回の件は、誰かに迷惑をかけたわけではない。
もしも制服姿で乱闘騒ぎでも起こしたのなら話は別だが、何をしていたといわれても「制服姿で買い物をしていた」でしかない。
それでも社内規定違反であることは間違いないので該当者が怒られるのも致し方ない。
会社の規模の大小に関わらずイメージを大切にする。
ヤマト運輸や佐川急便などの大手になればなるほど、その意識は強い。自社のイメージを損なうような行為に対してナーバスになるのは致し方がないと思う。
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