最近の人出不足の深刻さから、どの企業もようやく従業員が大切な存在だと気付くようになってきたと言えよう。
それまでは、ヤマト運輸や佐川急便に限らず、どの企業でも基本的に「代わりはいくらでもいる」というスタンスであったと考えられる。
だからこそ、従業員に対して「嫌なら他に行けばいい」と言わんばかりの態度、環境だった会社も多かったのではなかろうか?
それが今では「どうかうちで働いて下さい」という時代になった。
業務委託、アルバイト、パート、正社員、契約社員の私たちにとってはやっと待ちに待った時代が到来したと実感できる。
今回の話はそんな時代になる以前、ヤマト運輸で仕分け作業をしている契約社員からのクレームをご紹介しよう。
それまでヤマト運輸の仕分け作業は質より数を重んじ、大量にバイトを雇っていた。日雇いという形態で雇っているので2ヶ月毎に入れ替わる。
まさに「代わりはいくらでもいるから」と言わんばかりの制度だった。それでも以前は12月24日、25日や年末年始は荷物の量が増えるのと人出不足が顕著であったため、臨時で「時給アップ」を実施していた。
バブル時代にはその期間だけ時給を500円もアップしていたベースもあったようだ。
それから時代も代わり、さらにはリーマンショックの余波もあり、毎年行っていたクリスマス、年末年始の時給アップは廃止されることになってしまった。
人件費も無尽蔵に使える訳ではないので致し方なかったのだろうが、これに対してパート社員からクレームが付けられた。(条件が提示されて自分の考えに合わなければ職場を変えれば良いだけのような気もするのだが・・・)
パートの集団ボイコット
ヤマト運輸には労働組合はあるが、ベース作業に従事するパートや契約社員、バイトには当然のことながらない。
ベースもそうした事情を承知しているからこそ、特別手当の廃止を決めたのだろう。これに対してパートや契約社員たちが怒りを露わにした。
彼らの言い分としては、「時給が上がらないのは理解出来るが、荷物の量は減るの?」というものだった。
確かにこの理屈は真理で人件費に余裕がないから臨時ボーナスをコストカットせざるを得ないものの、荷物量が減るのかといえばそうではない。
当時はアマゾン問題でヤマト運輸が混乱をきたす前ではあったものの、特にクリスマスともなればベース、営業所など荷物で溢れかえって忙しくなるときだ。
時給は上がらないけれども荷物の量は増える。
つまり、ヤマト運輸の考えは「時給は変わらないけど忙しいから頑張ってね」という意思表示でもあった。
これに対し、パート、契約社員そしてベテランのバイトが24日、25日の両日に休暇を取ってしまった。
パート、契約社員、バイトは自由出勤
ヤマト運輸の仕分け作業は契約社員であればシフト制の自由出勤になっている。
1か月単位で予定を提出するのだが、人員配置担当者は細かいところまで見ているのではなく、その日の労働者の総数しか見ていない。
つまり、有能な契約社員であろうが頼れるベテランバイトであろうが「1人」というカウントしかしていない。
つまり、誰がいつ出勤なのかなどの細かい部分までは把握しておらず、24日、25日は人手が足りないくらいにしか考えていなかったのだろう。
そして、「誰が出勤していないのか?」までは把握していないため、当日になるまで状況を把握出来なかった。
もちろん人数が足りないことは分かっていたので、出勤の協力を呼び掛けることによって頭数は揃えることは出来た。
しかし、当日になり契約社員やベテランバイトが出勤していないことが判明した。
12月から新たにバイトを始めまだまだ作業に慣れていないスタッフばかりでベースは司令塔不在で混乱状態に陥った。
通常であれば発送作業は22時までに終了するのだが、その日は0時過ぎまでかかってしまった。
発送作業の遅れはベースからトラックが出発するのが遅れ、さらには各センターへの荷物の到着の遅れになり、翌日からのヤマト運輸の配達時間に大きな支障をきたすことになる。
そういった事情を抜きにしても、1年で一番忙しいと言える超繁忙期当日は何から手を付けてよいのか分からないようなパニック状態とに陥り、破損や誤仕分けも多数発生してしまった。
パート一揆後の対応
これに懲りたのか、翌年からは時給を上げたのではなく、ベテランバイト・契約社員は24日、25日は「強制出勤」になった。
「ヤマト運輸様は人を雇ってやってるんだぞ」という姿勢が通用した時代ならではの話だ。(現在でもヤマト運輸様は業務委託を突然契約解除するなどヤマト運輸様が業務委託を雇ってやってるんだぞ、という姿勢が強く見受けられる。その結果、業務委託のヤマト運輸様離れが加速しているように思う。2019年7月8日)
もちろんヤマト運輸のこの対応に対してもクレームの声が上がった。
そこで、ヤマト運輸としても「なるべく協力してください」と若干態度を軟化させた。
ここ数年は事情も変わってきて、クリスマスや年末年始には僅かではあるが時給を上げているベースもあるという。
ヤマトホールディングスは、このような姿勢を続けていたのでは労働力の確保などままならないだろう。
今の時代はバブル時代と違って経営者にとっては大変な時代ではあるが、その一方で労働者にとっては悪くはない時代なのかもしれない。
ヤマト運輸に代表される「雇ってやってる」、「代わりなどいくらでもいる」と思っていた企業はなかなか考え方を修正できないでいる。こうした企業はこれからの人材獲得競争では苦戦を強いられることになると思う。
ヤマト運輸もドライバーへの環境は徐々に改善する傾向にあるものの、営業所やベースのスタッフに対しての待遇はそのままだ。「文句があるなら他に行けばいい」と言わんばかりだ。
ヤマト運輸が今後どのような労働環境を模索して行くのかが見ものだ。
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