これまで様々なクレームを受けてきたが、対処に困るクレームもいくつかあった。
とにかく謝り通すことで問題解決ができるようなクレームであれば、特に大きな問題にはならない。しかし、謝るだけでは済まずに、改善を求められるクレームの場合は少々厄介だ。
今回は、「改善策が簡単には見つからないクレーム」トラックを移動させろというクレームを取りあげる。
ヤマト運輸の主管支店は基本的に工業地域にある。
それなりに大きな土地が必要になる以上、住宅地などに設置できる訳がないし、全国に向かって走り出すことを考えると高速道路や産業道路沿いの方が利便性が良いに決まっている。
主管支店から全国各地に向けて走り出すトラックもあれば、逆に全国各地から主管支店を目指して走って来るトラックもある。
だからこそ道路環境の良い場所に主管支店はあるのだが、そのようなエリアは当然ヤマト運輸だけではなく、他にもいくつかの工場や倉庫などが存在する。
今回のクレームは主管支店の近くにある工場からのものだった。
主管支店に入れないトラックがその工場の前で待機しているので移動させろというものだった。
ヤマト運輸の路線トラックが路上駐車で通報される
こういうクレームはもっともな要求であり、もしも逆の立場であればこちらも同じようにクレームするに違いないと思う。
繁忙期でない月であれば問題にはならなかったかも知れないのだが、悪いことにそのクレームが届いたのは12月のことであった。運送業界にとっては、お歳暮の配達で最も忙しい月だった。
繁忙期ともなれば主管支店には多くのトラックが入って来る。
主管支店内に入りきれないトラックもあるため外で待機してもらわざるを得ない。
それが主管支店の目の前ならいざ知らず、どうしても「入庫渋滞」が起きてしまい、結局他の工場の前にも止めざるを得ない状態になってしまう。
他社の工場の前にヤマト運輸のトラックの行列ができてしまい、クレームを受けても直ちに解決する術もなく、「善処します」と返事をするしかなかった。
結局は主管支店の駐車スペース不足の問題だ。
ドライバーとしても荷物を運搬するのが仕事であって、決して路駐したい訳ではない。
それどころか、運んできた荷物を早く降ろして、休憩するなり、新たな荷物を積んで次の目的地に向かって走り出したいと思っている。
むしろ彼らにとっては駐車している時間なんて無駄なだけである。
特に遠くから来たドライバーであれば疲れてもいるだろう。主管支店にはドライバーの仮眠室がある。大浴場もあるので、路駐などしていないで少しでも早く休憩を取りたいと思っているに違いない。
つまり、ドライバーも「路上駐車問題を何とかしてもらいたい」と思っている側だ。
今回クレームしてきた工場の動きは早かった。そのクレームを受けて一週間も経たないうちにその工場の前や周辺道路に「駐車禁止」のポールが立てられてしまった。
これで、事実上路上駐車が不可能になってしまった。
余計な仕事が増えることになった
それ以降、ドライバーが主管支店に入る際には連絡が必須となった。
ドライバーが突然来ても、主管支店に入れない場合もある。そこで、予め、ドライバーが主管支店への到着時間を連絡する。
もちろん以前にもある程度の大まかな運行状況は知らせるようにはなっていたが、その後は、主管支店最寄りのSAやPAから連絡を入れることが義務付けられるようになった。
この制度はあくまでも7月のお中元と12月のお歳暮の時期だけに限られてはいるが、ドライバーや主管支店の負担が増えたのは言うまでもない。
トラックの待機問題は現実的に難しい
このようなトラックの待機問題は、ヤマト運輸だけではなく、トラックを保有しているどの会社にとっても決して他人事ではない。
トラックはただでさえ一般乗用車よりも大きいため、駐停車できる場所が限られている。
ドライバーがコンビニなどで休憩を取りたいと思っても、2トン車や4トン車くらいであればともかく、8トン車あるいはそれ以上ともなれば駐車できるスペースもない。
結局はSAやPAくらいしか「確実に」駐停車できる場所がない。
ドライバー同士で「あそこは道が広いから路上駐車しても大丈夫」「警察もあまり来ないから穴場だ」などの情報を共有していることもある。
これは、本来であれば会社、あるいはドライバーへの依頼主が待機所まで用意しなければならないのでなかろうか。
だが、どの会社も一度に複数のトラックに来られてしまうと対応出来ないのも事実だ。
昨今、ドライバーの人手不足は社会問題になりつつあるが、運送会社にとってはトラックの待機問題もまた、頭の痛い問題になりつつある。
それに加え、ネット通販の拡大により荷物量は莫大に増えている。
そうかといって運送業者は急に駐車用のスペースを拡大することもできない。
この問題はまだまだ運送業界内のみの問題として留まっているが、抜本的な解決策を見つけられない状態が続けば、やがては社会問題にまで発展しかねない。
しかし、現段階では、これといった改善策が見当たらないのも事実だ。
特に都心の運送業者にとって、この問題は大きな問題になりつつある。
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