【昔の佐川急便はシートベルトの装着義務違反で捕まっただけで進退伺い】「退職届は受理されるのか?」

佐川急便に入社して新人研修、独り立ち、初めての年末繁忙期を乗り越えて

3年くらい経った頃

月曜日の朝、全体朝礼で

S課長、「シートベルトの取り締まりが厳しくなっているから十分に気を付けるように」

という訓示があった。

岡本、「(心の中)配達中にシートベルトをしなければいけないのか?」

時代は平成9年とか?そんな頃。

岡本、「K先輩、配達中にシートベルトなんかしたら、配達終わらないですよね?」

K大先輩、「そうだよな~、ま~、幹線道路だけ(シートベルト)やっとけば良いんじゃないか?」

この頃は、キー抜き、シートベルトを締める、なんてやっていたら仕事が終わらない、という考え方が佐川急便ドライバーの一般的な考え方だった。

佐川急便のドライバーに限らず運転中にシートベルトを締めて運転する、という考えは

今のように浸透していなかった。

会社帰りに運転しているのに定食屋に寄って、ビールジョッキを一杯飲む、なんて事も平気でしていた時代だった。

岡本、「そうですよね。デカい道路だけ(シートベルト)締めておけば良いっすよね」

右折したら警官が隠れていた

S営業課長の有難い訓示があって2~3日経った頃

その日は雨が降って若干配達は遅れていた。

岡本、「(心の中)いつもより配達が遅れているな。早く帰って(営業所に戻って午後便の)荷引きをしなければ…」

月曜日に全体朝礼で話していた訓示の事なんてすっかり忘れていた。

配達1件目まではシートベルトをしていたが

岡本、「(心の中)(シートベルト)するの面倒くせ~な。配達多いしムリ」

早々にノーシートベルトで配達していた。

時間は12時30分頃だっただろうか?

安全運転10則の「右折時は横断歩道手前で一時停止」なんていう取り決めがあやふやだった時代。

高速徐行で右折をすると

ピピー

岡本、「(心の中)え?笛の音?」

警官が道路に飛び出してきた。

警官、「いつもシートベルトはしていないの?」

岡本、「…いえ…しています」

嘘だった。

警官、「ちょっと、脇に寄ってくれないかな」

岡本、「…はい」

佐川急便の2トントラックを歩道付近に寄せると

警官、「免許証見せて」

岡本、「すいません。今後、気を付けますので…許してください」

例え、その場がどんなに惨めだろうが、違反切符を帳消しにしてくれるなら、土下座でも何でもするつもりだった。

警官、「それは出来ないよ。申し訳ないけど取り締まりをするのが仕事だから」

3~4分粘ったが

岡本、「(心の中)これ以上、遅くなると配達先にも迷惑が掛かるし…(営業所に戻って)荷引きを

しなければ」

警官から違反切符を受け取った。

怖い営業課長に違反の報告

当時は携帯電話はあったが、ポケベルが全盛の時代。

岡本、「…配達を終わらせて…営業所に戻って(違反の)報告をしないと…」

営業所に戻ると大先輩ではあるが比較的話のし易いT運行管理課長は外出中だった。

岡本、「(心の中)やべ~、S営業課長に報告だ…」

S営業課長は強面(こわもて)で、いかにも佐川急便の管理職という風貌の課長だ。

しかも、2~3日前の月曜日の全体朝礼で「シートベルトの取り締まりが厳しくなっているから気を付けなさい」との有難い訓示を受けたばかりだ。

岡本、「(心の中)死ぬ覚悟が必要だな(大袈裟ではなく)」

S営業課長は2階の営業事務所にいる、と教えてもらった。

岡本、「入ります」

営業事務所に入る時は「入ります」

事務所の中にいる上司が「どうぞ」と言ってから事務所に入るのが掟(絶対的な決まり事)だ。

S営業課長、「どうぞ」

S営業課長の野太い声が聞こえた。

岡本、「報告します。シートベルト違反で捕まりました」

S営業課長、「は?」

岡本、「…申し訳ありません」

S営業課長、「お前、月曜日の全体朝礼の話、聞いていなかったのか?」

岡本、「…聞いていました」

S営業課長、「俺が何て言ったか言ってみろ」

岡本、「…シートベルトの取り締まりが厳しくなっているから気を付けるように、とおっしゃっていました」

S営業課長、「そうだよな~、何で(シートベルト違反で)捕まるんだ?」

岡本、「…申し訳ありません」

S営業課長、「申し訳ありませんじゃね~だろ。説明になってね~んだよ」

地獄のような説教が10分くらい続いた。

S営業課長、「明日までにお前なりに考えて、俺のところに朝一で報告に来い」

という言葉でS営業課長は訓示を締めくくった。

岡本、「…分かりました」

仕事が終わって家に帰る途中、マイカーを運転しながら

岡本、「(心の中)課長は決意を見せろ、みたいな事を言っていたから…退職届けしかないよな」

死に物狂いで頑張ってきた3年間が走馬灯の如く蘇った。

岡本、「(心の中)俺、佐川急便、辞めるのか…」

涙が出てきた。

家に帰って

岡本、「今日、シートベルト違反をして、明日、退職届けを出さなければいけなくなった…」

と妻に話した。

妻はビックリしていたが

妻、「しょうがないよ。あんなに頑張っていたのにね」

思わずカミさんの前で大泣きしてしまった。

後にも先にも妻の前で泣いたのは、この時だけだろう(現在、別居中なので)

予想を超えた展開

翌朝、前日の夜に書いた退職届をS営業課長に届けに行くと

意外な反応だった。

S営業課長、「え?退職?俺はそこまで言ってね~ぞ」

そして、その話を聞いていた運行管理のT課長が

T運行管理課長、「岡本、今から警察行くぞ」

岡本、「警察ですか?」

T運行管理課長、「まだ、間に合うかもしれね~な」

岡本、「…はい?」

この後の記事はコチラ

T運行管理課長と警察に行って、シートベルト装着義務違反は免除になった。

岡本、「(心の中)佐川急便ってスゲ~な~。会社に借りが出来たな、恩返ししないと」

と思った日だ。

営業所では違反していないことになったので、お立ち台(罰ゲーム)もなし

そして、班の大先輩だけは、この事を知っているので

尊敬するS大先輩、「岡本、S課長に退職届け出したんだって?」

岡本、「はい、覚悟を見せようと思って」

尊敬するS大先輩、「やっぱ、岡本はスゲ~奴だな」

岡本、「いや、そんな…」

尊敬するS大先輩、「そんな事なかなか出来ね~よ」

シートベルトの装着義務違反をして先輩からも褒められる、という不思議な出来事になってしまった。

今から25年前の出来事ではあるが忘れられない出来事の一つだ。

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