ヤマト運輸のあるベースで重大なクレームを受けたことがある。
クレームの主は航空会社と国土交通省だった。それはヤマト運輸という存在そのものが吹っ飛びかねないくらい重大なものだった。
飛行機に搭載出来ない荷物
航空便を扱っている運送会社は、航空機に搭載できない荷物は航空便として集荷してはいけない、という前提があります。今回の話は、ヤマト運輸が国土交通省から行政処分(事業改善命令)を受けた話です。
・ 宅急便で送ることが出来ないもの(ヤマト便では送ることが出来るものも含まれます)
宅急便で送れないものcheck
・ 航空機に搭載することが出来ない品目(航空便として集荷することが出来ない品目)
危険物貨物についてcheck
ヤマト運輸に限らず佐川急便でも同様の事件がありました。 佐川急便(株)及び佐川グローバルロジスティクス(株)に対する事業改善命令及び「航空貨物輸送に係る安全対策研究会」の開催についてcheck
ヤマト運輸が日本全国至る所に配送できるインフラを整えているのは説明するまでもないが、離島への配送はどうしても「船便」に頼らざるを得ない。道路が繋がっていない以上、いくら天下のヤマト運輸でもこればかりはどうにもならない。しかも、目的地は沖縄だ。
沖縄への配送方法は「陸送+船便」と「空輸」の二種類ある。
飛行機での配送の場合は、航空法など様々なルールに従わなければならない。
一般旅客は飛行機に搭乗する前に不審物のチェックを受けるが、宅配荷物も同様だ。
飛行機には「持ち込み禁止」のアイテムがあり、当然「配送業者」であっても、持ち込み禁止物を飛行機には載せることはできない。
つまり、そのような荷物は飛行機で配送することができないので、鹿児島からの海上輸送になる。
時間はかかってしまうが、飛行機に載せることができない荷物はこの方法以外にはない。
なぜこのような問題が起きるのか?
ヤマト運輸は、「持ち込み禁止荷物」を飛行機に搭載しようとしてしまった。これが、航空会社と国土交通省からのクレーム内容だった。(ガソリンの入った発電機を航空便として集荷➔ 危険物(ガソリンの入った発電機)の航空運送に係る行政処分について )
問題が発生した背景にあるのは、荷物の仕分けの煩わしさだ。
ベースでの仕分け作業時、沖縄行きの荷物には「通常の荷物」と「航空機への持ち込み禁止荷物」の二種類あることになる。
そのため、どのベースでも沖縄行きの仕分けにはベテランスタッフを配置している。
ベースで仕分けを行う際、基本的には番号を見て仕訳けしている。荷物には「〇〇-〇〇-〇〇」と6桁のシールが伝票に貼ってある。
沖縄行き荷物の先頭の2桁は必ず「98」になるが、航空便不可の荷物もあるので番号だけで判断するのではなく、荷物の品目までチェックしなければならない。
今回のクレームの原因は、こうしたルール・システムを知らないスタッフが沖縄行きの荷物を仕分けしたことにあるのだろう、と推測される。
その結果、航空会社、さらには国土交通省からもクレームが来ることになってしまった。
人手不足の穴埋め
現状、どのベースでも外国人留学生に頼らなければ作業ができない程、人出不足は深刻だ。
日本語を勉強中の彼らとベースの作業員とではコミュニケーションが上手くできない。
仕分け作業を教えるときに、「番号を見て分ける」程度のことは身振り手振りを交えて教えることはできても、「沖縄行き荷物には二種類ある」など、細かい伝達は難しいだろう。
もちろん外国人留学生たちの中にも日本人同様、一生懸命やる者もいれば、隙あらば手を抜こうとする者もいる。
従って、「外国人留学生はダメだ」と一概に烙印を押すわけにはいかない。
現実的に言葉によるコミュニケーションが取れない以上、どうにもならない問題なのも事実だ。
事件後の対応
このクレーム以降は、仕分け作業が終了してから社員たちが沖縄行きの荷物を全て品名までチェックし直すようになった。
今後、例え手違いで一つでも禁止荷物が混じっていたとしたら、警告だけで済む問題ではなくなることは間違いない。
その後全てのベースが沖縄行き荷物の品目・内容等をより厳しくチェックするようになったのは言うまでもない。しかし、どのベースも人出不足に悩んでいる以上、同様の問題がいつ生じてもおかしくはない。
改善策はあるのか
この課題に対する改善策はあるのかと言えば、これがなかなか難しい。
人手不足だけのことであれば、外国人留学生で穴埋めすることができる。
だが、沖縄行き荷物の問題に関しては事情に精通したスタッフでなければならない。
慣れているスタッフが出勤している時はまだいい。そのスタッフが不在のときはどうするのかということだ。
人手不足がさらに深刻化している中で、沖縄行き荷物の問題を解決するためには、ベースのあり方そのものを変えなければならない。
だが、残念ながらどのベースでもそこまで考える余裕がない。
結論を言えば、ヤマト運輸がベースの人件費をもう少し増やせばいい。しかし、残念ながらその可能性は極めて低いと思われ、再び同様のクレームを受けるのは時間の問題だろう。
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