ジャパンタクシーとは、トヨタ自動車が2017年10月23日に発売した新型タクシー車両。
トヨタのコンパクトミニバンの2代目「シエンタ」をベースに開発された。
日本におけるタクシー専用車は1995年のトヨタ・コンフォート、「クラウンコンフォート」「クラウンセダン」が採用されてから今回のジャパンタクシーの開発は22年ぶりとなる。
日産もかつてはタクシー専用車として「クルー」を生産したが、販売台数が少なく採算が合わない為に撤退した経緯がある。
最も台数が多いと言われる東京の場合でも、法人タクシーは約3万台、個人タクシーが約2万台の合計5万台、タクシーの走行距離は平均40万~50万km。
年間15,000台位しか売れないモデルを生産すれば採算割れになり、赤字部分はトヨタが負担していたとも言われている。
こうした経緯もあり、新モデルの生産まで22年もかかってしまったのだ。
最新のジャパンタクシーは開口部を大きくした電動スライドドア、後部座席を広くするなどの工夫がなされている。
車椅子利用者、高齢者、外国人旅行者らに快適に利用してもらうことを意識してデザインされた新型車両、と言われていた。
国土交通省が推奨するユニバーサルデザインタクシーとしても認定されている。
ジャパンタクシーと従来のタクシーの比較
ここで、ジャパンタクシーと従来のタクシーとの比較をしてみよう。
ジャパンタクシーのドアは左側が電動スライドドア、助手席はヒンジドア。右側運転席と運転席の後ろのドアはヒンジドアで、乗客の乗る側がスライドドアになっているのが大きな特徴。
ヒンジドアは殆ど瞬間にドアが開閉されるが、スライドドアの開閉には多少時間がかかる。
これがスライドドアの欠点であると指摘する専門家もいるが、安全面と比較すれば多少の時間がかかるくらいは大きな問題とはいえないだろう。
そして、従来のヒンジドアの場合はドアが開くスペースや障害物を考え、左横に多少のスペースを空けて止めなければならない。
しかし、スライドドアだとぎりぎりに寄せて止めてもドアの開閉ができるので、安全面でもドライバー、乗客の双方にとってメリットがあると言える。
次にトランクルームだ。
セダンの上向き開閉タイプのトランクの場合は、入りきらない荷物も半開きにして走ることができるが、ジャパンタクシーの後部ドアは完全に閉めなければならない。
しかし、これがジャパンタクシーの欠点といえるだろうか?
元々トランクルームのドアを開いたまま走る方に問題があるのではないだろうか。
3番目には窓の開閉の問題だ。
ジャパンタクシーの左側の窓はもちろん開閉できるが、右側窓は開閉できない。
右側座席の人が表の空気を吸いたいとか、気分がすぐれないときなど、左側座席の人と意見が合わずに開けらないケースも考えられる。
何故?開閉できなくなっているのか不明だが、これは将来的に改良の余地があると思われる。
こうして見ると、良いことだらけのジャパンタクシーに見えるが、ここにきて大きな問題が指摘されている。
それは、「車椅子」の乗客を乗せるのに時間がかかり過ぎることと、横側からの乗降りのため場所によっては乗降りができないことだ。
車椅子のお客さんの乗車拒否問題
ここで、車椅子を乗せるまでの過程を順番に説明しよう。
➀ 運転席のシートを最前にし、背もたれも最前に倒す。次に助手席のシートを一度前に出し、最後部まで移動させそのままの状態でリクライニングレバーを引き上げたままにすると背もたれが倒れシートがタンブルする。
➁ 車内に戻り料金トレイをはずし、リアシートクッションを跳ね上げてロックする。
➂ スロープを設置する。段差の高さに応じてスロープNo1とNo2.を合わせて高さの調整をする。
このような順序で車椅子の乗客を乗車させるのは、15分から20分かると言われている。手慣れたドライバーでも10分、少しでももたついたら20分はたっぷりかかる作業になる。
通常のタクシーより大型で障害者対策として導入を進めている「ユニバーサルデザイン」のジャパンタクシーが障害者を乗車拒否している事例が3割もあることが問題になっている。
こちらのサイト様が詳しく報じています。➔ 車いすごと乗るタクシー、乗車拒否3割近く 団体調べ
先日、仕事で第2京浜の品川周辺(戸越周辺)を走っていると車椅子に乗っている年配の方が手を挙げてタクシーを停めようとしていたが何台も素通りしていた。
正直、私もタクシー運転手だったら停めるかな?と思ってしまった。
タクシーの運転手は歩合で仕事をしている。乗車するのに時間が掛かったり面倒なお客さんは乗せたくないというのが本音だ。
運転手の考え方に任せてこの問題を解決するには限界がある。
倫理とか道徳ではなくタクシー運転手が車椅子のお客さんを乗せる方が稼げる、というシステムを作り上げる方が現実的だろう。
道幅が大きな問題
そして次に問題になるのは、道路幅だ。車幅2メートル、スロープ2メートル、車椅子の乗り込む距離1メートルとすれば合計5メートルの幅が必要となる計算になる。
幅が4メートルあれば道路と認められるが、4メートル道路では車椅子の乗降はできないことになる。ましてやこれより狭い路地などでの乗降は不可能である。
これでは、車椅子を使用する人にとって「ユニバーサルデザイン」とは言い難い。
車椅子の団体は1万件以上の署名を集め、こうした乗降りに不便な構造を改善するようトヨタ自動車に要求書を提出したとのこと。
百歩譲って、車椅子の乗降りに多少の時間がかかるのはある程度やむを得ないとしても、道幅の狭い場所などで乗降りができないことは、致命的な欠陥と言えよう。
ジャパンタクシーは従来のタクシーに比べて大幅に改善され、大きな期待を持って登場したが、ここにきて「車椅子の乗降り」問題が大きくクローズアップされている。
トヨタはジャパンタクシーの開発の際にこの問題を認識できなかったのだろうか。
根本的には、車の横側から車椅子を乗せようするところに問題がある。
救急車のように後方から乗せるようにすれば、道路幅の問題も解決でき、所要時間もほんの数分で済むことになる。
トヨタはジャパンタクシーを製造する際に、車椅子の乗降の重要性を軽く考えていたとしか思えない。
ジャパンタクシーはLPG燃料のハイブリッドシステムを搭載している。このLPGタンクが車の後部に位置しているために車椅子を後ろから入れられないのだ。
LPGタンクの位置を変えて、車椅子が後ろから乗降りできるようにすればこの問題は解決できるのでないか。「素人がこう考えるほど簡単ではない」と反論されるかも知れない。
しかし、世界のトヨタの技術をもってすれば、とても不可能とは思えない。
国と東京都も補助金を増額するなどして、官民一体となって対策を講じることに期待したい。
2020年の東京オリンピック、パラリンピックには多くの外国人が来日する。その中には車椅子利用の外国人も多数含まれると予想される。
現在出回っているジャパンタクシーが全国的に広まる前に、それも2020年以前にこの問題が早期に改善されることを望みたい。(2019年12月6日改訂)
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