【アマゾンの合わせ買いが「うざい」と言われる理由】街の本屋が消える日

ネット通販の発達によって様々な業界がダメージを受けているが、その際たるものと言えば出版業界ではないだろうか?

現代は活字離れ、出版不況とも言われているが、それまで書籍で読んでいたものがネットで読めてしまう以上、わざわざ書籍を購入する必要性が無くなってしまった。

それだけに、出版業界も様々な工夫を凝らしてはいたのだが、2018年の年末に出版業界に大きな衝撃が走った。

その衝撃の主役はまたしてもアマゾンだ。アマゾンは江戸時代の「黒船来航」といったところだろうか?

アマゾンの存在は日本の産業構造に大きな衝撃を与えている。アマゾンが提供している「合わせ買い」の対象商品が拡大されたことで、出版業界には大きな懸念が広がっている。

アマゾンが提供している合わせ買いとは、その対象商品であれば合計2,000円以上の購入で送料が無料となるというもの。

1,900円購入して送料を支払うよりも、何かを上手く「合わせて」購入すれば送料が無料になるのでお得になるというシステムだ。

もちろん合わせ買いできる商品の範囲と価格は限られているが、それまで書籍は432円未満が対象だった。

つまり、それまでは安い本のみが合わせ買いの対象だったが、今後は972円未満へと広がったことで、安い本のみならず、ちょっとした雑誌も対象に含まれるようになった。

それまであわせ買い目当てで「軽い気持ちで購入してもらいたい」と思っていた安い書籍のライバルが増えることになってしまったことを意味する。それ以上に大きな衝撃を受けたのは本屋だ。

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街の本屋が無くなる日

それまでは432円未満が合わせ買いの対象であったことから、433円以上の書籍をアマゾンで購入すれば送料がかかっていた。そのため、送料がかかるなら近くの本屋で買おうと多くの人は思っていた。

しかし、合わせ買いの対象が972円未満に上がったことで、972円未満の本ならアマゾンで買った方が得だということになってしまった。

その点では今回のアマゾンの合わせ買いの対象商品変更によって一番打撃を受けるのは972円未満の書籍をメインに販売している出版社そして本屋であろう。

ただでさえ本屋の閉店が相次いでいる中で、アマゾンが合わせ買いの範囲を拡大したことを受け、更に本屋の需要が低下することになる。ただでさえ苦戦を強いられている本屋から、さらに本屋を利用する理由が減ってしまった。

ちなみに出版科学研究所の試算によると、平成30年の漫画の単行本を含む雑誌の販売金額はおよそ5,800億円。書籍と合わせた紙の出版物の販売金額はピーク時の半分にも満たない金額になっているという。

出版業界が苦境に立っているのは言うまでもないが、アマゾンの今回の変更で更に追い打ちをかけられた格好になった。

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あわせ買い対象商品が変更になった理由

何故?合わせ買いの範囲が変更されたのか。その背景にあるのはやはり物流コストの上昇である。

こちらの記事を参考にさせていただきました。➔ アマゾンの「あわせ買い」、対象拡大で雑誌に波紋check

アマゾンがここまで大きな影響力を持つようになったのは、それまで国内産業が出来なかったことを断行したからに他ならない。

しかし、それは国内の業者が出来なかったのではなく、「物流業者に対して申し訳ない」という心理がブレーキを掛けていたに他ならない。日本古来の共存共栄の心理だ。

しかし、外資系のアマゾンは容赦なく実行した。

日産のカルロスゴーン元会長と同様、歴史やしがらみを気にしない外資だからこそ出来たことだ。

外資系特有の競争原理で低単価の配送をしなければならなくなった佐川急便やヤマト運輸も悲鳴を上げることとなり、佐川急便はアマゾンから撤退することになった。

そして、多くの人が「凄かったのはアマゾンじゃなくヤマト運輸」だと気付かされた。

アマゾンは自社での物流インフラを構築しようとしているが、物流業界はとにかく人手不足状態だ。その結果、人件費の高騰を招き、それがサービス料金に転嫁せざるを得ない状況となっていった。

つまり、今回アマゾンが合わせ買いの範囲を拡大したのも、物流のコストが高くなっていることによるものだ。安い本だけではなく、ある程度の値段の商品も購入してもらいたいとの思惑が働いたのであろう。

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アマゾンの合わせ買い対象送品の拡大は「うざい」と評判

一方、書籍、出版業界はアマゾンの今回の方針変更に対して及び腰だ。それもそのはず、書籍を扱っているサイトとして考えるとアマゾンこそ、まさに国内最大の書籍ネットショップになるからだ。

もしも今回の変更が気に入らないからといってアマゾンに難癖を付ければ、その結果は目に見えている。アマゾンから「じゃあそちらの出版社の書籍は扱いません」と言われ、国内最大のネット本屋から締め出されることになる。

ヤマト運輸や佐川急便はアマゾンに対して「NO」を突き付けることが出来たが、出版、書籍業界がアマゾンに「NO」を突き付けることは出来ない。

ヤマト運輸や佐川急便はアマゾンの荷物が無くてもやっていけるが、出版業界はアマゾンという強大なプラットフォームを無くすことにでもなればそれこそ死活問題だ。

しかし、アマゾンを敵に回すと出版業界が死活問題に陥るからアマゾンの言うことを聞く、というアマゾンへの依存体質を改めない限り、出版業界が交渉のイニシアチブを握り現状を打開する術はない。

個人的な意見だが、アマゾンの合わせ買い戦略は、ユーザーにとって便利さよりも合わせ買い商品を安く買うためには合わせ買いで他の商品をわざわざ選んで購入しなければならず不便さを感じた。

アマゾンの自社配送アマゾンフレックスは、世界で一番の配送品質を目指す、という看板を掲げているが再配達を減らす置き配を推奨している。

ユーザーファーストを見失っているアマゾンの戦略は日本文化に受け入れられるのだろうか?

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