大手運送会社の佐川急便、ヤマト運輸でも毎年のように自走事故が起きている。研修で何時間も教育を受けて耳にタコが出来るくらい「自走事故を起こすな!」と言われているドライバーでさえ自走事故を起こす。
自走事故を起こすドライバーには駐車をする時の癖がある。
マイカーではギアをパーキングに入れるだけでサイドブレーキをしない、という癖だ。この癖が営業車でもいつしかするようになり忙しい日にギアをパーキングにすることを忘れて自走してしまう。
ギアをパーキングにすることとサイドブレーキは、どちらかを忘れても片方をしていれば車は自走しないので片方を忘れた時はもう片方が保険みたいになっている。
以下、事故事例です。
2018年6月20日、運送業者にとっては衝撃的な事故が起きてしまった。
岐阜県揖斐川にて、坂道に駐車されていた無人のトラックが動き出してしまい、止めようとしたドライバーが自分の車に轢かれて死亡したという事故だ。
登りの坂道で停車していたトラックが突然坂道を下がって来たので、自分で車を止めようとして下敷きになってしまったものだ。
この事故に巻き込まれた車両や歩行者がなかったことは不幸中の幸いであったが、こうした「自走事故」は運送業界では決して珍しいものではない。
事故には必ず何かしらの原因がある。
車止めを使用していなかったことが判明した
この車は灯油販売のためのトラックで、運が悪いことに当日は雨が降っていて路面が濡れていた。
また、車止めも使用していなかったことも判明した。
サイドブレーキの使用状態は公式な発表がないので定かではないが、ドライバーとしても本来であれば停車には十分注意すべき状況であったことは間違いない。
このような自走事故が起きた背景には、ドライバーの油断があったものと思われる。
ドライバーにとって車両は商売道具。
自分の車の特徴は十分に承知しているはずなのに、なぜこのような事故が起きるのだろうか?「少しくらい大丈夫」との油断があるからだろう。
これはヤマト運輸や佐川急便のドライバーにとっても他人事ではない。
特に配送業界の場合はどうしても数をこなさなければならない。そのため停車の際には、停車した時点で「この駐車方法で大丈夫なのか?」ということよりも、「荷物を早く配達したい!」という思いが先行してしまう。
もちろんしっかりと安全確認をしなければならないのだが、「事故なんてそうそう起きるものじゃない」との油断が、今回のような事件を起こしてしまったものと想像される。
ノルマに追われているという背景
今回の事故は灯油販売業者の場合だが、運送業界全体にも同じようなことが起こらないとは限らない。「とにかく数をこなさなければならない」という焦りがあるからだ。
例えばヤマト運輸のドライバーの場合、ドライバーは荷物を1個運ぶ毎にインセンティブが付くシステムだ。
だが、宅配業務の最中は「これで〇〇円稼いだ」などと計算しているドライバーはいないだろう。
なぜなら、そんな悠長なことを考えている余裕などないからだ。とにかくその日の荷物を全て配達しなければならない。
その日のうちに配送できなかった荷物は「済みません、明日にしてください」は通用しない。
時間指定・配達日指定がある以上、その日のうちに配送しなければならない。
集配の荷物が少なくて心身ともに余裕がもてる日もあるだろう。
しかし荷物が多い日は、「その日のうちに何とかしなければならない」という意識が強い。
その結果、停車時の確認等が散漫になってしまい、こうした事故が起きてしまうのだろう。
一般の人は「焦るのは分かるけど、しっかり確認しろ」と思うだろう。ごもっともな意見だ。
ただ、ドライバーにそこまでの負担を与えている環境も、無視できないのではなかろうか。
ヤマト運輸や佐川急便の現場を支えているのはドライバーだ。
もちろんドライバーだけではなく、仕分け作業や営業所の事務など、なくてはならない業務は多々あるし、何かと批判の対象である上層部も、それはそれで彼らでしか出来ない仕事をこなしているのも理解できる。
だが、明らかにドライバーという最前線の業務に対して理解が不足しているのではないかと思わざるを得ないケースが散見される。
悪循環に陥りやすいドライバー環境
このような事件があれば、ヤマト運輸や佐川急便などの運送業者でも「今後はこういったことが無いように気を付けましょう」「決して他人事ではありません」とドライバーに周知徹底するすることになる。
もちろんルール作りは大事だ。今後の戒めとして新たなルールが作られる。これがドライバーの負担を増やしていることはよくある。
もちろん、こうした新しい改善策を決めるのは現場ではなく、上層部だ。
ドライバーの負担を考慮に入れない改善策が強制的に押し付けられる。
それらが業務上マニュアル化されても、実行されなければ意味がない。ドライバーへの負担が増し、それが更なる焦りを生むことにもなりかねない。
自走事故は業界全体としても防がなければならない重要な問題だが、その対策についてはもっと現場のドライバーの意見にも耳を傾けるべきだ。
ヤマトオートワークスの考案
上層部は事故が起きた時に「怪我をしたからバンドエイドを貼っておけ」という感覚だ。
しかし、上層部が考えなければならないのは、その都度バンドエイドを貼るのではなく、そもそも「怪我をしない環境作り」のはずだ。
職場の環境作りは、上層部が考えることだ。
しかし、この手の「新しいマニュアル」作りには、現場のドライバーの声が反映されるケースは殆んどない。
ドライバーからすれば「こんなことするの?」「これは意味ないでしょ?」と思うようなことをマニュアルの名の下に強制され、それが、新たなプレッシャーになる。
ヤマト運輸や佐川急便では、営業車を「停車」「駐車」するたびに「輪留め」をしなければならない。
外国人から見れば、「あの日本人は何をやっているのだろうか?」と思うことだろう。
いくら、事故対策とはいえ外国人から見れば駐車のたびに輪留めをするのは滑稽でドライバーの作業負担も多い。
自走事故防止のための輪留めはドライバーにとっては負担の多い作業である。
それよりもトラックが自走しないように警報を鳴らす装置の開発や、こうした装置を装備したトラックを開発することに取り組んでもらいたい。
ヤマトホールディングスのグループ会社ヤマトオートワークスは自走事故抑止のための警報装置付き車両を考案した。
マニュアルに従わなかったために事故を起こしたりすれば、それを防止するための新たなマニュアルができる。運送業界はこの繰り返しだ。
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