今回の話は少し堅苦しい話になりますが、運送業に従事する私たちにとっては重要な話ですので、かる~い気持ちで読んでいただければ幸いです。
アメリカ発の排出ガス規制が世界的に広まることで、やがては世界から「ガソリン車」が消える日が来るかも知れない。
今回は日本にも迫りくる「ZEV規制」についてお話致します。
ZEV規制とは何のことなのか?
米国カリフォルニア州の大気資源局(CARB=California Air Resources Board)が1998年に導入を開始した制度のことです。
「ZEV」とは[Zero Emission Vehicle]のことで、排出ガスを一切出さない自動車のことをいいます。
日本では、「ゼロエミッションビークル」と呼ばれています。
排出ガスゼロの自動車とは、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のことです。
2018年現在、国産車でZEVに該当するのは、
・ 電気自動車(EV) 日産「リーフ」、三菱「MiEV」、スバル「ステラ」
・ 燃料電池車(FCV) トヨタ「MIRAI」、ホンダ「クラリティ」
などです。
ZEV規制の仕組み
カリフォルニア州内で一定台数以上の自動車を販売するメーカーはZEVを一定比率以上販売しなければなりません。
2018年現在の比率は16%です。
つまり同州で10万台を販売するメーカーは、ZEVを16,000台販売しなければなりません。
一定比率に届かなかった場合はどうなるのか? 罰金を科せられることになります。
ZEV規制が導入された経緯
実際にZEV規制が始まったのは1990年代であると言われています。
カリフォルニア州はロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴなどの大都市を抱えるガソリン最大の消費地です。
US-EPA(アメリカ合衆国環境保護庁)は、カリフォルニア州を「大気中のオゾン規制が殆ど守られていない州」に分類しました。
即ち、同州には、スモッグや光化学スモッグが蔓延していると認定されたことになります。
これが、ZEV規制導入の発端になりました。
ZEV規制の罰金とクレジット
ZEV規制には独特の制度が存在します。それが「クレジット制度」です。
クレジットとは、CO2削減量/実績係数のことで、ZEV販売台数が上記の一定比率を上回った場合に褒賞として与えられます。
反対に一定比率を下回るとCARB(カリフォルニア州大気資源局)に対して罰金を支払わなければなりません。
罰金を支払う代わりに、クレジットを多く所有している他のメーカーからクレジットを購入することができます。
罰金の額は「1クレジット当たり5,000ドル」と言われています。
他社からクレジットを購入する際の価格は公表されていないので不明ではありますが、罰金の額よりは「ディスカウント」されていると想像されます。
アメリカの代表的なEVメーカーである「テスラモーターズ」は、2013年上半期だけでおよそ日本円で140億円のクレジットで利益を上げたと公表しています。
クレジットについては理解しにくいので、分かりやすく解説している記事を見つけました。読めばざっくりと把握できると思います。
ZEV規制対象の変遷
ZEV規制導入直後は、従来のCO2の排出量が少ないハイブリッドカー、天然ガス車、低燃費ガソリン車はZEV規制の対象外として販売台数に含めることが認められていました。
ところが、2018年には全て対象から除外されてしまいました。
トヨタが誇りとし、その生産にも力を入れ日本では人気の高い「ハイブリッドカー」はZEV規制下では、もはや「エコカーとは認められない」状況になっています。
ZEVの波及
カリフォルニア州からスタートしたZEV規制は、現在では殆どの州でも採用され、今後もアメリカを含め世界中に拡大して行くものと見られています。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大がアメリカ経済に大きな打撃を与え、トランプ政権下では環境問題が大きく後退したと言わざるを得ない状況です。
ZEV規制に対する日本メーカーの対応
2018年からハイブリッドカーがZEVの対象から除外されたことにより、トヨタを始めとする日本のメーカーは窮地に陥ったと言えます。
トヨタの場合は、従来の販売台数で積算するとカリフォルニア州だけでおよそ4万クレジットが必要になります。
これを罰金で支払うとおよそ220~230億円になる計算です。
そこで、トヨタはパナソニックとの協業で電池価格を引き下げる作戦をとりました。スバルとマツダもトヨタと歩調を合わせています。
日産は好調な電気自動車「リーフ」でクレジットを稼ぐことができます。
ホンダについては現在のところいかなる戦略を立てるのか見えていません。
日本における電気自動車(EV)の展望
2018年9月、英国の高級車メーカーであるジャガー・ランドローバー社は、ジャガー初のEVとなる「I-PACE」の発売を発表しています。
メルセデス・ベンツやアウディも相次いで新型EVを発表しています。
今や「EV」は世界の常識になりつつあります。トヨタは自社の電動化技術は進化していると説明している。
しかし、EVの生存競争においては、一般に売れる新型のEVを製造、販売しなければ、自信だけでは打ち勝てるものではありません。
EVを生産したとしても、その性能、デザイン、価格などが消費者に受け入れられるものでなければなりません。
現行のEVは航続距離が短いことを欠点のひとつとして挙げられています。
しかし、航続距離を長くすることは当たり前で基本中の基本であり、今後は議論の対象にならないものと思われます。
日本からガソリン車が消える日が来るかも知れない
こうした世界の潮流の中で、日本においてもいずれは、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)が主流になる日が到来することは間違いありません。
そのとき、ガソリン車やディーゼル車は、日本からその姿を消すことになるかも知れない。
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