「運送業界の負担が限界ギリギリ」ということは、多くの人に知られるようになってきました。
ドライバーの人員不足に加えてネット通販の普及による荷物量の増加。
こうした問題に対して抜本的な解決策が見つからないなど運送業界は何かと大きな課題が山積しています。そんな中、佐川急便のある発表が大きな反響を呼んでいます。
佐川急便は、2019年1月1日より元旦に荷物を預かった営業所、中継センター間の輸送業務を中止すると発表しました。
1月1日に預かった荷物の配送は1月3日以降になり、さらには当日集荷も事前予約のみにしたとのことです。
佐川急便のこのような発表は、一昔前であれば「怠慢だ」「ちゃんと仕事しろ」といった声が寄せられていたことでしょう。
しかし今日、佐川急便のみならずヤマト運輸などを始めとした運送業界が悲鳴を上げていることを多くの一般の人も理解してくれるようになりました。
そのため、ネット上では「しっかり休んでください」「こうした動きには大賛成」など、佐川急便を称賛する声が上がっています。
これまで運送業界にとって「元旦」は休日ではありませんでした。(四半世紀前は、運送業界も元旦は休日でした)
年末年始は実家で過ごしたいと考えている人も多いため、「元旦に届けてもらいたい」との需要も多かったのです。
佐川急便で働く管理職、ドライバー、アルバイトが正月に休めるようになる
営業所では元旦に届ける荷物を仕分けるため年末の方が忙しく、年始は比較的荷物の量も少なくなります。
配送するドライバーにとっては、元旦指定の荷物は元旦に届けなければなりませんので休む訳にもいきません。
荷物量そのものは、他の日と比べると決して多くはありませんが、元旦指定の荷物があるため、どうしても休むわけには行かないのです。
今回、佐川急便が発表した内容は、元旦指定の荷物は配送するものの、当日集荷は受付けず(事前集荷予約が必要)営業所、中継センター間の輸送を中止する、と言った内容です。
センター間の輸送を中止することで、1月2日、3日の営業店の配達個数も少なくなり配送スタッフの人員を少なくすることが可能になります。
これで「物凄く仕事が楽になる」といったレベルではありませんが、それでもこうして佐川急便が関係スタッフの負担を少しでも減らそうとする試みは評価に値するものです。
何故ならば、佐川急便のこのような姿勢は他の運送業界にとって他人事ではないからです。
どの業界でも労働力不足が叫ばれていますが、運送業も同様に深刻です。
求人媒体への出稿も多く、とにかく人材獲得に躍起になっていますが、ただ単に広告を出せば人が集まるという時代は終っています。
労働者がどのような基準で仕事を選ぶかと言えば、賃金もさることながら「労働条件」にあると言えます。
かつては「休みなんていらないから仕事して稼ぎたい」という人が多かったのですが、近年は「賃金は高いに越したことはないけど、それよりも休みが欲しい」と考えている人の方が多くなってきています。
つまり、ただ単に求人募集の広告を出すだけではなく、業務そのものの改善が迫られているのです。
既存のドライバーの負担を軽減させることはもちろん大事です。
佐川急便がこのような姿勢を見せれば、その他の職種においても、各社が求人の際に「労働条件の良さ」をアピールしようとします。
業界全体の労働環境の改善効果が期待できることになります。
運送会社のドライバーの労働環境は?
かつて運送業界は「頑張れば稼げる」業界でした。
そして、未だにその名残を引きずっているため、週に1日程度の休みや年間休日が100日を大幅に切っている運送会社は珍しくはありません。
単純に計算しても週休2日ペースであれば、年間休日は「104日」です。
それでもしっかり稼げるのであれば納得もできましょう。
しかし近年は頑張りに見合った額を稼げるのかといえば、少々物足りないと感じているドライバーが多いのが現実です。
最近では、「稼ぎ」よりも「休みたい」という労働者が増えているため、運送会社側も経営方針の方向転換を迫られています。
これまでと同じスタンスを続けるのであれば、求人もままならず、今以上に業務に支障をきたすことになることは火を見るよりも明らかです。
今回の佐川急便の「元旦の一部業務の見直し」発表は、ドライバーの労務改善の大きな一歩になることが予想されます。
今後、例えば同じように「お盆休み」が導入されることも考えられます。
配送の需要の少ない日は無理に稼働させるのではなく、休日を挟むことによって稼働日の効率を良くさせる方向へと進むのではないでしょうか。
奇しくも郵便局も法律で定められている週6日の配送を考え直すよう要望を上げたことがニュースになりました。
それまで人手が足りていたからこそ「当たり前」だったことが、人出不足によって「実はありがたいものだった」と気付かされるようになりました。運送業界の場合がその最たるものです。
抜本的な人手不足解消の目処が立っていない状況下で、今後も更に荷物は増え続けます。
つまり、今のところ順調に回っている配送所・営業所も今後はさらに人手が求められることになって行きます。
その改善策としてヤマト運輸は運送料の値上げによる荷物量の抑制に踏み切りました。
佐川急便は労働環境を見直すことでドライバーの負担軽減だけではなく、人材獲得のためのアピールも行っています。
今後このような動きが拡大していくことが予想されますが、どのような形で問題と取組んで行くのか、運送会社にとってはまだまだ試練は続きそうです。
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