現在タクシー業界を取り巻く環境は決して良いとは言えない。問題が山積しているからだ。
国土交通省の調査によれば、平成元年(1989年)の法人タクシー事業者数は5,677社、タクシー車両数は203,227台、個人タクシーの車両数は47,221台であった。
その28年後の平成28年(2016年)には、法人タクシー事業者数6,231社、車両数188,792台、個人タクシー台数35,150台となっている。
同統計によれば、法人タクシーの事業者数は9.7%と微増したものの、タクシーの台数は法人、個人ともに減少している。これは一体何を物語るのだろうか?
今回は、タクシー業界の問題を分析し、その課題と今後の対策に鋭く切り込んで行く。
現在のタクシー業界には多種多様な問題が山積している。そのひとつひとつが深刻な問題ではあるが、解決が決して不可能なものではない。
慢性的な人員不足ではあるが、年齢や資格等の条件が緩やかな為、失職者、転職者の受け皿としての需要は多い。しかし、こうした人員を確保できたとしても、短期間での離職者が多いという問題を抱えている。
短期間の経験しかないドライバーは後述する「➂ 地理を覚えられず仕事にならない」という原因がある。
半年で離職したAさんの離職の理由は複合的であり、決して一つだけの理由ではなかったという。
その主たる理由は、➀ 給料が安い ➁ 体力的にキツイ ➂ 地理を覚えられず仕事にならない ➃ 先輩のイジメが酷い ➄ 事故や違反が重なる などであった。
ドライバーの高齢化
少子高齢化は、日本全体の問題でありタクシー業界に限ったものではない。
人員不足とも相まって比較的高齢でも就職できる業界であることも手伝い、タクシードライバーの平均年齢は60歳以上が半数を占めているという。
ドライバーの地理不案内
タクシードライバーになるには、普通自動車第二種免許の取得が義務付けられている。
入社後は、地理試験、実地テスト、基礎知識研修などを経て実際の運転業務を始められるシステムになっている。
机上の地理試験に合格しても、カーナビを見ても実際に現場を走ってみなければ建物、道路事情などを知ることはできない。
走行経験を重ねる前に退職してしまい、また次の新人を雇用し、同じ事を繰り返していれば、「いたちごっこ」の状態が続くことになる。
これに加えて、日本の地番表示の複雑さも影響している。
1丁目の次が2丁目か3丁目にならずに、いきなり8丁目では、4、5丁目を探すのに苦労する。これは行政の問題であるが、結局は運転経験が解決してくれる。
羽田空港で違法な白タク
次に深刻なのが白タク問題だ
最近は空港、駅周辺にアジア系、主に中国系の白タクが引っ切り無しに出入りして、違法行為を繰り返している。
出発前にスマホで予約ができ、料金も安く、言葉が通じるなどの理由から中国人訪日客の多くが利用している。
こうした違法な白タクの横行により最も影響を受けるのが、タクシー業界である。
全国ハイヤー・タクシー連合会の事務局によれば、中国からの観光客を対象にした白タクが国内に横行し始めたのは2年ほど前からだという。
このままタクシー客が白タクに流れてしまえば、タクシーの売上は減少し、ドライバーの生活を脅かすことになりかねないと訴えている。
警察関係者が白タクらしい現場を目撃したとしても、「友達を迎えに来た」と言われればそれ以上追及することはできない。乗客も「ドライバーの友達」と口裏を合わせている。
ライドシェア
海外においては、一般の人が自家用車で有償送迎するいわゆる相乗り乗車のライドシェアが流行っており、スマホのアプリで簡単に予約できる。
これは海外では違法ではなく、この波もひたひたと日本に押し寄せつつある。
タクシー業界の将来性と今後の課題
これだけ山積する問題を一挙に解決できる方法は見当たらない。
ドライバーの定着率を高めるには、待遇面の改善が求めらる。
介護福祉士の定着率が悪いのも仕事のハードさに比較して給与が低すぎることが大きな原因と言われている。
タクシー業界は一般企業と比較して廃業、倒産の少ない業種だ。
企業が利益を求めるのは資本主義の基本であり、これに異を挟むつもりは毛頭ない。
しかし、当面は企業利益を減らしてでもドライバーの待遇を改善することにより、定着率を向上させることを考えてみてはどうだろうか?
この結果、ドライバーが定着し、地理不案内問題も同時に解決でき、会社の評判も上がることは間違いない。
その結果、待遇改善に伴う企業ロスなど瞬く間に回収できる。
白タク問題については、予約と支払の関係が立証できれば、道路運送法違反で逮捕できる。
3年以下の懲役もしくは300万円以上の罰金または両方の併科を厳しく適用する。
支払いはスマホのアプリで決済される為その立証が難しいという。
しかし、日本警察のIT技術を駆使しメディアでも取り上げて逮捕、過料をすることにより白タクは危険だという意識を植え付けることにより壊滅できよう。
ライドシェアは日本の法規制の関係で直ちに認可されることはないと思われる。
しかし地方の特殊性などを考慮のうえ、タクシー業界に大きな影響を及ぼさない範囲で規制が徐々に緩和されるものと予測される。
日本タクシー業界が抱える問題は、経営者の利己主義を捨て利益配分を実行することによりその大部分は解消できると確信している。
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