昨今、「インスタ映え」「SNS映え」といった言葉が流行っている。
良い写真が撮れたらInstagramをはじめとするSNSにアップロードすることで「いいね」やコメントをたくさんもらいたい人が増えているという。
旅行の記念に写真を撮るよりも、インスタ映え、SNS映えの写真のために旅行している人もいるほどだ。
観光地などでは良い写真を1枚撮りたいがために、周囲のことを考えずにポージングをしたり、周りの人が邪魔そうにしていてもお構いなしに写真を撮り続けているインスタグラマーがいる。
だが、今回のヤマト運輸に寄せられた思わぬクレームはそんなインスタグラマーから飛び込んできたものだ。
ある営業所のクレームだが、「撮りたい写真の脇にトラックがあって邪魔なのでどかして欲しい!」というものだった。
これまで様々なクレームがあったが一種の揚げ足取り、難癖のようなクレームはあった。
しかし今回のように、写真を撮るのに営業車が邪魔だというクレームは初めてだった。
若者ならではのクレームかと思われるかもしれないが、実はそこそこの年齢の主婦からのものだった。
主婦でもSNSにハマっているのかという気持ちと共に、そこまでして良い写真をアップロードしたいものなのかと思ったものだ。
例えば一時的とはいえ路上駐車をしているのであればこちらにも非はあるが、ドライバーが停車していたのは路上ではなくコインパーキングだった。
つまり、停めていても誰にも文句を言われない場所だ。
ヤマト運輸は理不尽なクレームに「NO」を言える会社でなければならない
しかし、たまたまある観光スポットが近く、さらにはそのクレーマーからすると自分の撮りたい一枚にヤマト運輸のトラックという「SNS映えしないもの」が写り込んでしまうので退かせと言う。
さすがにこんなクレームを相手にする必要はないだろうと思いきや、営業所トップの判断は「取り敢えず退かせ」という判断だった。
相手がおかしなクレームをしているのは分かっているが、ここで正論をぶつけてもかえって厄介なことになるという判断なのだろう。
これくらいのクレームならば、車を移動させるだけで解決できるものだが、ヤマト運輸の事なかれ主義が見え隠れしている。
例えば日付指定、時間指定だったものが大幅に遅れたとか、運んだ荷物が破損していればクレームを受けても当然だ。
そういうクレームは「誰が」ではなくヤマト運輸全体の責任だ。
集配、ベース仕分け、営業所仕分け、ドライバー全員だ。
しかし、近年増えているただのワガママなクレームに対してはヤマト運輸としても「お気持ちは分かりますが、こちらも業務ですので対応しかねます」といった毅然とした態度があってもいいのではないだろうか?
なぜなら、クレームにより一番迷惑を被るのは、エンドユーザーと接しているドライバーだからだ。
今回、クレームを受けてコインパーキングに駐車していた営業車を退かしたドライバーは、こう思うだろう。
「なんて弱腰で腑抜けな管理職なんだろう」
こんな管理職を尊敬できるだろうか?
今までこのドライバーとどんなに良い関係性を築いてきたとしてもドライバーは幻滅するだろう。
上層部は社内で取り決めを行うだけだ。
しかし、実際にそういったクレームに対して実害を被るのはドライバーだ。
今回の件にしても、「SNS映え」というクレーマーの満足のために、過失のないドライバーがトラックの停車位置を変えなければならないのは理不尽と言わざるを得ない。
電話を受けた営業所の事務員は、電話越しに「ご迷惑をおかけしてすみません」と謝れば済む。
しかし、ドライバーはクレーマーに面と向かい怒られることになる。
ヤマト運輸はドライバーを守れる企業でなければならない
ヤマト運輸に限らず、運送業界の人出不足は深刻だ。
少しでも労働条件を改善するなどして人手を確保しようと躍起になっているが、これから入社してくる人間だけではなく、現在在籍している社員も大切にするべきだ。
入社した時は、希望を膨らませていても、労働環境に満足できなければすぐ会社を辞めてしまう。
今のヤマト運輸は「釣った魚には餌を与えない」姿勢が見られる。従業員の新規獲得には躍起になっている一方で既存従業員には厳しい。
特にこういったクレームに対しては事なかれ主義とも言える「とりあえず謝っておけ」という姿勢だ。
何ら過失のないドライバーがクレーマー相手に「申し訳ございません」と頭を下げるのはどう考えても納得が行かない。
「これでは無理だ」と感じ、ヤマト運輸を去るドライバーがいるのもあながち不思議ではない。
求人に多額の経費を投じるよりも、少しはドライバーを守る姿勢を見せることの方が大事なのではなかろうか?
そうすることによってヤマト運輸のドライバーという意識を高め、人材も集まりやすくなるのではないだろうか?
ドライバーが不足しているといいながら、事なかれ主義でドライバーに負担を強いている。
果たしてヤマト運輸の上層部はこの矛盾に気付いているのだろうか?
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