【宅配事業で惨敗した日本通運】マンモス企業の起死回生策とは?

日本通運(日通)は、1937年(昭和12年)「日本通運株式会社法」に基づく国営企業として発足した。

 

戦時経済統制の一環として、戦時物資を円滑に供給する為に、貨物列車に積み込む荷物をトラックで集荷・配達する全国の通運業者を統合したものである。

 

「日通に運べない物はない」と自負し、陸運・開運・空運の全てを網羅し、重量物・大型貨物・美術品・動物・鉄道車両などとありとあらゆる輸送に対応してきた。

 

ペリカン便で宅配便事業に参入

 

その日通が1977年(昭和52年)「ペリカンBOX簡単便」の取り扱いを開始し宅配事業に参入する。1981年(昭和56年)に「ペリカン便」に改称しヤマト運輸の「宅配便」と佐川急便の「飛脚宅配」と熾烈な競争を繰り広げることになった。

 

ペリカン便が惨敗した理由

 

日通はヤマト運輸と佐川急便との競争に苦戦し、2社との差は開くばかりの惨状であった。その大きな理由は、日通の「鉄道輸送優先」にあったと言われている。

 

筆者はかつて、日通、ヤマト運輸、佐川急便の3社に東京の荷物を長野に運ぶ見積もりを取ったことがある。結局は、日通が一番高かったので、別の業者に依頼することにした。日通の担当者は筆者の友人でもあったので、他社よりも安くなることを期待していた。担当者に理由を尋ねると、鉄道輸送とトラック輸送の両方を使うからだとのことであった。

 

こうして、日通はその後2009年(平成21年)新会社「JPエクスプレス」を設立し、ペリカン便事業をここに移管した。そして余曲折の末、2010年(平成22年)8月に980億円もの累積赤字を残し解散することとなった。惨敗であった。

 

日通のようなマンモス企業が、一般消費者向け宅配というニッチな分野に参入したことがそもそもの間違いであったと感じるのは筆者だけであろうか。

 

日通の意地「スーパーペリカン便」

 

一般消費者向けペリカン便をゆうパックへ移管したが日通にはスーパーペリカン便という事業が今も存続している。

 

ここに天下の日通の意地が見られる。全国主要都市へ翌日午前中までに配達される「急行便」。全国へ翌日の午前9時までに配達される「特急便」。そして、全国へ当日中に配達される「超特急便」の3種類がある。問い合わせはWebまたは電話のみの対応になっている。

 

日通のM&Aによる海外事業展開

 

このように宅配事業で惨敗を喫した日通ではあるが、やはりそのスケールは大きい。

 

宅配便事業からは事実上撤退した日通ではあるが、今度はその目を海外事業に向けたのである。特に欧米市場においてのM&Aを活発化して行った。

 

宅配便事業の破綻から早くも2年後の2012年3月には、米国日本通運がアメリカのAGS社を買収。同社は米国内・国際の輸送業務や倉庫業務などを主とした中堅物流会社である。

 

そして、同年10月には香港日本通運がAPC社の全株式を取得した。同社は香港に本社を置き、アパレル・化粧品などの物流を主業務とする会社である。ノルウェー・スウエーデンなどの北欧を中心に他の欧州地域にも業務を展開している。

 

高級ファッションブランド輸送業務への参入

 

日通はその後もM&Aによる海外進出を続け、2018年にはイタリアの高級ファッションブランドの倉庫管理・運営や配送を手掛ける「トランコンフ」社を完全子会社化した。

 

トランコンフ社はイタリアのヴェローナに本拠地を置き、欧州・米国・中国などで高級ファッションブランド商品の倉庫管理や配送サービスを行っている。

 

日通はこうしてM&Aを通じて海外事業を展開することにより、ついにファッションブランドの流通事業にまで参入を果たした。

 

日通の更なる事業展開

 

日通は2017年5月には、「スマートスキャニングサービス」を開始している。

 

同社は既に2015年3月に豊田自動織機から「ワンビシアーカイブズ」を買収している。官公庁や金融機関・医療機関などの機密文書・データの保管が主たる事業であった。その技術と日通の持つセキュリティ輸送技術を結集し、機密文書の輸送・保管・電子化・溶解処理などを一括して受託するサービスだ。

 

日通は「宅配便事業」においては惨敗という結果に終わったが、それよりも遥かに大きなスケールの事業に進出をしている。日通の「面目躍如」というところだ。

 

これは、さすがに宅配便事業の雄と言われるヤマト運輸や佐川急便も到底マネのできる分野ではない。

 

マンモス企業日本通運は、これからも進化を続ける!

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